灌漑

作物の栽培に必要な水を、耕地に人為的に供給すること。

灌漑に使用される用水は灌漑用水と呼ばれる。

灌漑の対象は、大きく水田と畑(温室、樹園地などを含む)に分けられ、それぞれ以下の目的がある。

水田灌漑における目的

  • 作物への水分補給
  • 多量な灌漑水による自然の養分補給と湛水中の藻類による空中窒素の固定
  • 湛水による温度環境の調節
  • 湛水による雑草・病害虫の抑制および稲の保護
  • 塩分などの有害物質の除去
  • 灌漑水による肥料・農薬の流入施用
  • 地域の水環境、生態系の保全

など

畑地灌漑における目的

  • 作物への水分補給
  • 播種・定植など栽培管理上の土壌水分調節
  • 農作業の計画的実施とそれに伴う作物の市場価値の増大
  • 灌漑なしには導入できない高収益性作目の導入
  • 施設園芸の導入
  • スプリンクラなどによる農薬・液肥の散布
  • 湛水による風食・凍霜害・潮害などの防止
  • 施設内部の温・湿度の調節
  • 畜産における糞尿処理水の灌漑

など

灌漑は一般に、多数の受益者の共同的な取水、送水、配水によって行われるので、広義には、これらの行為も灌漑に含められ、そのための適切な施設の建設と管理が灌漑の重要課題になる。

灌漑は、旱魃被害の防止、農作業の効率化とともに、導入可能な作目の拡大、計画的な農作業・出荷の実現などの効果をもつ。

日本の水田のほとんどは灌漑された灌漑水田である。

近年では、農村地域の都市化、混住化を背景に、環境保全、農村景観、水質改善などのために非灌漑期間にも農業用用排水路に水を流してほしいという要望など、農業用水の地域用水としての役割への期待が大きくなっている。